苫米地英人, フィデル・カストロ・ディアスバラールト 「もう一歩先の世界へ 脱資本主義の革命が始まった」




本屋でたまたま見つけ、著者の名前に惹かれて小一時間ほど立ち読みしていたら全部読んでしまった。

フィデル・カストロと聞いてキューバの革命家本人かと思ったが, フィデル・カストロ・ディアスバラールトはフィデル・アレハンドロ・カストロ・ルスの長男らしく、モスクワ大学原子力工学の博士号を取得した科学者らしい。


これまでキューバとは特に関わりがなかったので文化や歴史、国柄についてあまり詳しいことは知る機会はなかったが、なかなか面白い国だなと思った。本書の趣旨としては、要するにキューバで起こったような革命を日本を初め世界でも起こし資本主義の弊害から人類を解放し、戦争と差別の無い世界を創ろうという話。そのためにキューバから学べることは多いという。キューバの革命思想の根本にはチェ・ゲバラの存在があるわけだが、この辺りについてもいずれ知りたいと思っているので↓の映画のDVDを見ようと思っている。




本書では環境問題などを中心に資本主義を論じ、CO2による地球温暖化説やCO2排出権取引などを批判している。まぁ、この辺りについては以前色々と読んだので特に真新しい内容ではないが、とりあえず前提ということで。


まず興味深かったのは、キューバの医療技術は非常に高く9・11やハリケーンカトリーナの際には被害者及び被災者の医療支援を行ったという話。アメリカの医療システムが資本主義による弊害でbrokenなのは周知のことだが、それをキューバが支援していたとは知らなかった。検査の結果他の病気も見つかった患者に対しての治療も申し出たがアメリカ側が断ったという話は驚きだ。まぁ、アメリカらしいと言えばらしいが。。また、キューバでは高等教育も無料で行われているらしく、教育や医療に無闇に自由競争を持ち込むべきではないという主張を体現してるように思った。このようなアプローチは北欧諸国でも実施されているようだが、最近うまく回らなくなってきたという話も聞くので最近の動向をもう少し詳しく知りたいところではある。


このような資本市議の弊害を踏まえ、苫米地氏は日本は自衛隊を解体して削減された軍事費で世界の貧困を撲滅するために貢献すべきだ主張する。例え軍事力が無くとも世界の貧困撲滅のために奉仕する日本を侵略することは世界の同盟国が許さないから問題無いという主張らしい。これだけ聞くとナイーブに聞こえるが、それをどのように実現しようと考えているかはもう少し詳しく聞いてみたいとは思う。人間の煩悩を甘く見たマルクスの二の舞にならないように理想を実現するにはどうせれば良いのか。


まぁ細かいことは色々あるが、社会の根本的な仕組みから考え直す動機になるような内容で面白かった。日本という国柄があるのでまぁ分かるのだが、そもそも一夫一妻に拘る意味はなんなのかなぁとか。集団の中で生きる個々人の幸福と集団全体の面子というか体裁のどちらを優先させようと思っているのかが見えてくる。


苫米地さんの本を読んだり話を聞くと良いのは自分が無意識のうちに縛られている前提から解放されて思考できるようになることだと思う。何となく新しいアイデアが浮かんできたりする。