野口悠紀雄「経済危機のルーツ」




以前「世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか」を買ったときに一緒に買った本だがなかなか読む機会がなかったので時間があるうちに読んでおこうと思い読んでみた。


本書のテーマは2008年からの金融危機を発端とする経済危機なのでやや古い話ではあるが、内容的にはまだ社会的に吸収されていないと感じるので退屈しなかった。1970年代から現在に至るまでに、アメリカ、イギリス等の先進国と中国、インド等の新興国を中心に世界の産業構造がどのように変化し、経済にどのような影響を及ぼしてきたかが纏まっていて勉強になった。


要するに、中国、インド等が低賃金をベースとして製造業における競争力を高めて来た以上、先進国は金融、IT等を中心とする産業構造に転換しないとこれまでの経済力を維持することはできないが、日本は金融もITも産業のベースにすることに失敗してきたため世界経済の転換に取り残されてしまったという話。産業革命によって蒸気機関から電気を使う産業への工業化が繁栄をもたらしたように、情報革命においては工業社会から金融、ITをベースとする産業への転換が必須という話が印象に残った。


また、本書の中でアメリカの住宅バブルの構造が平易に解説されていて良く理解できた。アイルランドの金融、ITをベースとする産業構造によってもたらされた一人当たりGDPの高さの話も印象に残った。


色々勉強にはなったが、これからの日本に全く希望が持てないのが残念。