佐藤優 「国家の罠」




著者の佐藤優氏が逮捕されるに至った過程や当時の時代状況に関して、かなり詳細に説得力のある説明と分析がされていた。
佐藤優氏が逮捕されたのは当時の鈴木宗男事件に絡んでのことだが、当時できあがっていた世の中の雰囲気を思い出すと、
誰一人本書に書かれているような裏側についてまで考えていなかったと思う。
当時は鈴木宗男vs田中真紀子の戦いが面白おかしく報道されていて、その大多数が田中真紀子寄りだった。
本書には田中真紀子がどれほど無能な外務大臣だったかが、小馬鹿にしながら書いてある。
しかもそれがけっこう説得力がある。
振り返ると、当時の報道と世の中の雰囲気がどれほどおかしな物だったかが良く分かる。
本書の本題は国策捜査だが、取り調べ検察官とのやり取りについても詳細に書いてある。
印象的だったのは、取り調べの様子が取り調べというより交渉に近かったこと。
しかもそのやり取りが国策捜査が行われているという前提で行われていること。
確かに、国家が本気になれば一個人を有罪にすることなど訳無いことで、ターゲットになったらどうすることもできないのかもしれない。
マスコミに煽られて多くの国民が「アイツをやっつけろ!!」と思ったら、検察がメンツをかけて正義の味方を演じることによって世の中成り立っているらしい。
他の事件においても同様の現象が見られるが、それが正しいとは思わないし、これは民主主義というシステムの根本的な欠陥なのかもしれない。
しかし、現状では明らかに誤った悪意に満ちた報道をするマスコミや、自らの保身のために権力を振りかざす検察の横暴を止める術がない。
近年こういった事件が続発しているのは時代が変わろうとしている印なんだと思う。
そんな時代にこんな国で生きて行かざるを得ない一個人としては、そういった権力のターゲットにならないようにひっそり暮らすのが最善なんだと思う。