苫米地英人「魔女の鉄槌」



久しぶりに雰囲気が違うのが出たので読んでみた苫米地さんの本。中身も全体的にかなり刷新されていた印象だったので読む価値はあったと思う。


本書のメインストーリーは、中世にてグーテンベルグの印刷の発明が情報の伝達を可能にし起こった情報革命による社会変化と、現在進行しているソーシャルメディアによる情報の流れの変化による社会変化の対比かと思う。ただ、タイトルにもあるように切り口が「魔女の鉄槌」というのが独特で面白い。要するに、一般には印刷の発明によって最も広まったのは聖書ということになってるが、実は「魔女に与える鉄槌」という書物であるという話。本書によって感情を煽られた人々が魔女を作り出し魔女狩りを始めた流れと、現在人々がソーシャルメディアからの情報に煽動されている状況は酷似しており、このままでは現代版の魔女狩りが始まると警告している。


要するに、情報を流す側は何かしらの意図を持って巧みな仕掛けを作って情報を流しているので、そういった情報を鵜呑みにしていては権力者の思いのままに操られて再び魔女狩りが始まってしまうという。例えば聖書の翻訳も時の権力者の意図がかなり恣意的に反映されているらしいし、中東で起こった革命も裏ではCIAが煽動していたらしい。フェイスブックも日本に進出するために電通と組んで情報を操ろうとしているし、ツイッターも例えばオバマ政権が政治的に利用しようとしているのは明らかな気がする。最近オバマ主催で行われたシリコンバレーの大企業経営者を集めたディナーパーティーでも何かしらの合意がされた可能性が高いらしい。そういう観点から改めて考えると、世の中の大きな流れというのはそういった形で決まっているように見えるし、なるほどなぁと思う。そもそも人々が拠り所にする思想というのはいつの時代も時の権力者の意向によってコントロールされているものなのだと思った。結局、自由に生きるためには何かに依存するのではなく自分の頭で考えて行動するしかないんだなという結論。


自分は苫米地さんの著書は以前から何冊も読んでいるので自分が自由に生きるための行動はすでに始めているが、まだ既存の枠組みから抜け出るところまでは辿り着けていないので、もがきながらも引き続き努力を継続しようと思う。


ひとつ気になったのは、本書の終わりに書かれている今後の日本社会の見通しがネガティブなものであったこと。この終わり方は以前の著書とはだいぶ雰囲気が違うように感じた。これが示唆しているのは現状がかなり悪化しているということと、苫米地さんのようなヒーローが何とかしてくれると期待しているだけでは何も変わらず、本当に自分で行動しないといけないというメッセージなのかなと思った。


同じく最近出版された「利権の亡者を黙らせろ」もすでに購入してあるので近々読もうと思う。