福岡伸一 「動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか」




内容的には以前読んだ世界は分けても分からない生物と無生物のあいだと重なる部分もけっこうあるが、本書はタイトルにあるように生命の動的平衡性によりフォーカスしている。

気にとまった話をメモしておこう。

  • 人の細胞は食事と排泄の中ですべて入れ替わりが行われており、そこに保たれているのは動的な平衡性だけである。
  • 人間は考える管である。人の体は基本的に消化管という管であるという生物学的な見方。消化管の周りには緻密な末梢神経系が存在しており、ここでは脳で情報伝達に関わっている神経ペプチドというホルモンとほとんど同じ物が使われていることからそれが思考のメカニズムに関わっている可能性もある。
  • 食べ物が消化される際にはアミノ酸レベルまで分解されてから体内で再合成されるため、例えばコラーゲンをたくさん食事で摂取してもそれが体内でコラーゲンになるわけではない。
  • ミトコンドリアはもともとは単一の生物で人の体内で共生するようになったらしい。
  • ES細胞は多機能性細胞であるが、それを意図的に特定の細胞になるようコントロールすることはガン細胞をコントロールするのと同じような物で、そう簡単ではない。
  • 人間の思考は線形性にバイアスがかかっているが、現実の事象には非線形的なものが多くある。