大前研一 「さらばアメリカ」




出版直前から良書との評判だったので読んでみた。

確かに評判通りとても良い本だった。世界の現状を的を得て分析していると思った。
ただ、前半ではアメリカの現状をやや悲観しすぎている印象を持ったのと、後半で提案しているアメリカがこれからすべきことはやや理想的すぎる印象を受けた。


まず、前半で議論している現在の金融危機については確かに深刻だと思うが、ちょっと悲観しすぎているかなぁと思った。Newsweek誌によると第2次世界大戦にかかった出費が3.6兆ドルで今回の危機には8兆ドルかかるらしいが、いまいちその詳細が分からない。また、大前氏は現在の危機からアメリカが立ち直るには10年はかかると見ていると言うが、そうかなぁとも思う。自分の印象としてはうまくいけば2〜3年の内には上向き始める気がする。


あまり理論的な理由はないが、そうはいってもアジア、EUよりも実はアメリカの方が現状がましな気がしている(何となく希望がある)のと、そのアメリカが10年も回復しなかったら世界はもっと困ったことになると思うから、そうはならないかなぁと思う。


後半で提案している、アメリカが世界に謝って、世界の一員になって、戦争と決別するという話は、本当にそんなことをしたら理想的だと思うが、しないんじゃないかなぁと思う。何というか、しないだろうなぁと思う。


本書の中で興味深いと思った話は、今後のEUの台頭の話と、IT企業の経営者が政治家(大統領)になるかもという話。

EU台頭の話は、以前からヨーロッパに興味を持っていた理由と結びつく印象を受けた。

それから、アメリカの強さを最も感じるのは優秀な人がたくさんいることだが、そういった優秀な人たちが集まっているのが、本書の中でも言われている大学とシリコンバレーを代表とするIT企業だと思うので、その中から国を引っ張る人たちが出てくるともっと良い国になるかなぁと思う。

現在のアメリカの衰退はやはりブッシュを代表とする南部の人間の責任が大きいと思うが、やはりちゃんと優秀な人たちが国を引っ張らないとダメだなぁと思うし、アメリカにたくさんいる世界でも有数の優秀な人たちが国を引っ張り始めればアメリカはまた良くなると思う。


そして、それはすでに始まっている気がする。